★★★
「探偵少女アリサの事件簿」シリーズ第3作にして完結編。
本シリーズ、1巻につき4話ずつ収録されているんですが、これって4月~翌年3月までの一月ずつの出来事で、 3巻でちょうど1年分になっているんですね。今巻では、雪山の山荘やら、バレンタインやら、卒業やらが絡んできます。
(2024.01.04)
★★★☆
東野圭吾が送る新シリーズ。マジシャンが「ダークヒーロー」ならぬ「ダークディテクティブ」となる「ブラック・ショーマン」シリーズ開幕。
何年ぶりかの同窓会を控えた田舎町で、誰からも慕われていた教師であり真世の父・神尾英一が殺害された。 結婚を間近に控えていた真世は、何年も音信不通であった叔父である武史と再会する。 元マジシャンである武史は、持ち前の技を駆使して警察に頼らず真相解明に乗り出すのであった……。
マジシャンが探偵という新シリーズ。マジシャンの技であるマジシャンズ・セレクトやミス・ディレクション、 自分を警察官だと誤認させたり、相手から重要なことを喋らせるように仕向ける話術などを駆使して、 警察の情報を巧みにかすめ取りながら、真相解明を目指すという、新しいシリーズでした。
この叔父さんの性格だと、自分に関係のない事件にはあまり首を突っ込みそうもないんですが、 単行本では「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」という短編集?が発売されるようですね。
(2023.12.19)
★★★
探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめての続編。 武蔵新城で便利屋を営む橘良太が、世界的に有名な探偵を母に、そんなに有名でもない探偵を父に持つ自称探偵少女・有紗のお守りを引き受けながら、 様々な事件に巻き込まれていくシリーズです。4編を収録。
東川さん流のコメディタッチでありながら、4編中2編はちゃんと人が死んでるんですよね。 そして犯人の反撃にあって危ない目にも遭うという……。 次の3作目で完結みたいです。
(2023.11.27)
★★★
メルカトルと美袋のための殺人、 メルカトルかく語りき、 に続くメルカトル短編集第3弾。 ショートショートも含めた8編を収録。
相変わらず傲岸不遜なメルカトルですが、 中でも「メルカトル式捜査法」での「私がこんなミスをするなんて何か意味があるに違いない」 という前提を基にした推理はぶっ飛んでますね。
(2023.11.27)
★★★
横浜・伊勢佐木町でしがない探偵業を営む桂木圭一。知らぬ間に県警本部長と母が再婚しており、 いけ好かないイケメンエリートの一之瀬脩が義理の弟となってしまった。 探偵の機動力と警察の情報網を連携させて(中にはしょうもない事件も含めて)解決していく。
伊勢佐木町を舞台とした東川篤哉の新シリーズ。 各話のタイトルが「過ちの報酬」「尾行の顛末」「家出の代償」「酷暑の証明」とハードボイルドチックですが、 中身はいつもの東川コメディミステリです。この中では、ゲームセンターから始まる「家出の代償」が、 伏線のさりげない出し方と回収の仕方がうまいなあ、と思いました。
(2023.11.07)
★★★★☆
加賀恭一郎シリーズ最新作。加賀恭一郎シリーズには、「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」 という「~殺した」シリーズとでもいうべき系統があり、最後に真犯人が明かされないまま終わる (読者は作中の手掛かりを元に推理する)、という趣向が凝らされています。 このシリーズは、文庫化されると解説/巻末に真相が書かれていたりするので、 親本で読もうと単行本で購入(ノベルスから立派な単行本になりました)。
別荘地での恒例のバーベキュー大会の夜、無差別殺人とも言える凶行が行われ、5人が死亡。 その後、犯人は凶器を手に自首したものの、動機や手順といった真相は一切語らず。 生き残った遺族たちで真相を解き明かす「検証会」を実施しようということになり、 そこに長期休暇中の加賀恭一郎が参加して……。
二転三転する展開で面白かったです……が、最後ちゃんと真相明かされていますよね? それともまだ読者に推理する余地が残されているのでしょうか……。 ちょっと肩透かしを食らった感じです。
(2023.10.17)
★★★
間宵紗江子の義父と、同級生の詩織の母が、駆け落ちして失踪。
それを機に、紗江子の母・己代子は精神に異常を来たし、異常行動を取るように。
紗江子は常に孤立した学生時代を過ごし、大学へ進学し、シングルマザーとして娘を産むのだが……。
「間宵の父」「間宵の母」「間宵の娘」「間宵の宿り」の4章からなるホラー・ミステリ。
常に周りに不審な「死」が付きまとう紗江子。一体この起きている現象は幻想なのか現実なのか? と思っていると、最終章で驚愕の真実が明かされます。しかもホラーかミステリか、 曖昧な状態で進んで行って、一旦決着したように見せてからのどんでん返し。 歌野晶午さんの真骨頂ですね。
(2023.10.09)
★★★
これまで国分寺や八王子や溝の口といった郊外が舞台になることが多かった東川ミステリですが、 今シリーズの舞台は谷中・根津・千駄木の東京下町・谷根千エリア。 鰯専門料理店を営む兄・岩篠なめ郎(いわしのなめろう)を持つ女子大生・岩篠つみれ(いわしのつみれ)が語り部、 怪しげな開運グッズ販売店「怪運堂」を営む作務衣姿の竹田津を探偵役とした新シリーズ。
安楽椅子探偵とは対極の、散歩探偵というか。散歩して現場を見て、証言を集めて、真相に迫る、 というタイプの探偵です。主人公の名前からもわかるように、相変わらずギャグ多めです。
(2023.09.18)
★★★★
就活に失敗しオンラインゲーム三昧のニートと化した【刹那】。 伯父の遺産として離れ小島の研修所を相続し、親に捨てられた。 「ニートの館」と言う意味で「二百十番館」と名付けたその建物に、少しずつニートが集まってきて……。
東大卒だがコミュ障の【ヒロ】、医者だったが心折れて医者ニートとなった【BJ】、 マッチョだが常識がない【コマンドー】と仲間が集まってきます。 島の人々はお爺ちゃんお婆ちゃんばかりですが、皆親切で段々と馴染んでいくところがいいですね。
(2023.09.11)
★★★★☆
不当な理由で解雇され、腹いせに盗もうとしたが失敗、逮捕されてしまった玲人。 そこへ弁護士が現れ、依頼人に従うならば釈放する、という提案が。 玲人は仕方なく従うが、依頼人である伯母から命じられたのは大きなクスノキの番人だった。 昼間もパワースポットとしてたくさんの人が訪れるが、その真価は「夜」の「祈念」にあるという不思議なクスノキ。 満月の夜と新月の夜の前後だけ予約が入るこのクスノキに秘められた秘密とは?
メインとなるのは二組の祈念者たち。祈念に来る父親と、その父親が浮気しているのでは?と疑っている女子大生の父娘。 もう一組は老舗和菓子店の跡取り息子と常務。
玲人は、育った環境に恵まれず学がないだけで、実は頭は回り、弁も立つ、というのを周りが段々気づいていくところが面白いですね。
(2023.09.04)
★★★
鯉ヶ窪学園シリーズですが、今回の舞台は探偵部ではなく、第二文芸部。 三年生にして部長(唯一の部員)の水崎アンナは、文芸部と間違えてプレハブ小屋に入ってきた新入生の「僕」を軟禁し、 鯉ヶ窪学園を舞台にした自作の連作ミステリを読ませるのであった。
「作中作」の形式を取っているので、実際には学園では起きないであろう物騒な殺人事件やらが起きたりします。 が、動機の設定や警察の介入等の描写が甘く、「僕」に突っ込まれまくる、という。
どうしても作中作のレベルが低いので、評価も低めになってしまいますが、 連作短編全体に仕掛けられた仕掛けは面白かったです。
(2023.08.29)
★★★
「放課後はミステリとともに」の鯉ヶ窪学園探偵部の僕っ娘副部長、霧ヶ峰涼が一人称となった短編集。 「学ばない探偵たちの学園」の探偵部三バカトリオ・多摩川、八橋、赤坂も合流し、賑やかなことに。
同じ探偵部に属しているはずなのに、これまでの作品では共演がなく、今作品で初共演となる霧ヶ峰涼と三バカ。 その状況を「あの事件の時いなかったっけ?」「いやいないな」「すれ違ってたんだな、きっと」というメタな応酬でいじっています。
さらに「大金うるる」というミステリ研究会部長にして「エアコン仲間」なライバルも登場し、謎解き合戦を仕掛けてくる、という。 まあ、そんな感じで、日常の謎系でわちゃわちゃしている短編集でした。
(2023.08.29)
★★★
タイトルが「風来坊」と掛けているんだろうな、とは気づいていたのですが、 あらすじも何も見ずに読み始めたので、登場人物一覧に「加部谷恵美」「小川令子」とあったのを見て、 「え?あのシリーズだったの?」となりました。 「XXシリーズ」というらしいですね。
若いホームレスの素行調査を依頼された小川の探偵事務所(SYアート&リサーチ)。 特に問題ないと思っていて、相手の心も少し開いてくれたと思っていたところで、 とんでもない事件に発展し……。
何と言うか、加部谷さん(小川さんも?)男運が無さ過ぎるだろう、という感じがします。 海月くんのこと、まだ引きずっているのね……。幸せになって欲しいなあ……。
(2023.08.14)
★★★☆
小学生や中学生の頃を大人になってから振り替える短編5本を収録。
あとがき読んで、確かに伊坂幸太郎作品は、ジュブナイル系実は少ないことに気づきました。 ギャングやら殺し屋やらがたくさん出てくる世界感じゃ、そりゃ子供は出しづらいか。
(2023.08.01)
★★★☆
アニメ放映中に発売された第4巻は、前日譚を収めた「エピソードゼロ」集。 アニメが決まる前から書いていたそうですが、タイミングばっちりでしたね。
真打津軽が仲間となり、「怪物専門の探偵」としてやっていくことを決意する「知られぬ日本の面影」(ゲスト:小泉八雲)、 14歳の鴉夜が不死となる「輪る夜の彼方へ流す小笹船」(ゲスト:蘆屋道満)、 津軽が「鬼殺し」となり、「半人半鬼」になる「鬼人芸」、 静句がまだ首だけではない鴉夜に使えていた頃の話「言の葉一匙、雪に添え」、 ヨーロッパに到着した一行が弁護人を務める「人魚裁判」、を収録。
(2023.07.23)
★★★☆
「Another」シリーズの正統続編長編。前回の1998年から3年後の2001年が舞台。
「いないもの」を二人にして始まった「ある年」。 「死者を死に返した」ことで一度は収まったと思われた《災厄》が再び始まった……。
基本的には「不条理」なホラーなのですが、その裏に「理」のようなものが見え隠れするところがミステリっぽいですね。
(2023.07.10)
★★★☆
「理瀬」シリーズ最新作(私は勝手に「三月」シリーズと呼んでましたが、公式には「理瀬」シリーズのようです)。 十九世紀にたてられた「ブラックローズハウス」に招かれた理瀬だったが、 切断された死体と聖杯に彩られた宴は混沌へと……。
第三者視点から見ると、理瀬もかなり怪しいですね。 カルトかと思いきや、ちゃんと理に落ちる結末が待っているところがさすがでした。
(2023.07.02)
★★★
タイトルは江戸川乱歩の名編「赤い部屋」へのオマージュ。 古今東西の傑作推理小説をオマージュした9編の短編を収録した、 推理小説研究家でもある法月綸太郎らしい作品。
内容もメタフィクションあり、パラフィクションあり、量子SFあり、「読めない本」あり、 とバリエーションに富んでいます。
(2023.06.13)
★★★
知らぬは悠成ばかりなり――
教師の田附悠成は、しばしば夢を見る。しかしある時、夢の中で見たのと同じ文箱が物置から出てきたのを機に、 あれは単なる夢ではなく誰かの過去を追体験しているのではないか?と気づく。 やがて22年前に恩師の義理の息子が殺害された事件の真相の手掛かりを夢見ることになり……。
西澤さんお得意SF新本格の一種。タイムリープの一種ですが、いつの誰の夢を見るかは制御できないし、 憑依中も単に見るだけで過去の行動に干渉できないので、現実世界には特にSF的な影響は与えないですね (悠成が本来なら知り得ない情報を持っていること以外は)。
内容は、西澤さんのもうひとつの軸でもある官能風味がふんだんに盛り込まれた内容。 もう友人たちの関係の乱れていること乱れていること。 それこそ知らないの悠成だけだったんじゃないの?って感じ。 そして様々な伏線が回収されて明かされる驚愕の真相。 うーん、謎が解けるカタルシスはありますが、後味は……って感じですね。
(2023.05.26)
★★★★☆
すべての道はパンダに通ず――
「ドミノ」の続編。19年前か……。 前作と共通する登場人物もいるようですが、すっかり忘れています。が、何の問題もありません。 今回は、人間だけでなく、パンダ、イグアナ(の霊)、犬、まで入り乱れて、 なぜか皆「青龍飯店」へと集まっていく、という構成。 ラストの諸々が一気に解決していくところはスッキリしますね。
(2023.05.13)
★★★
「奇譚を売る店」「おじさんのトランク」と並ぶ「幻想奇譚シリーズ」の第2弾。 失われた楽譜を求める人に、どこからか探し出して届ける謎の男が、 世界のあちこちに神出鬼没に現れ、様々な謎を解く手がかりを与えていく……。
楽譜に絡めた色んな謎が散りばめられています。楽譜に書かれた「̂」はどこの言語なのか? 螺旋状に上がっていく音階はなぜ最後同じ音の連続で終わるのか? 戦地で聴いた村人の音楽は何だったのか?人の手で弾けないほどに音符で塗りつぶされた楽譜に秘められた謎とは? 西太后のためのオペラとは?パリの劇場で暗号で待ち合わせをしたはずの二人はなぜ逢えなかったのか?
ラストで連作短編ならではの仕掛けもあったり、楽しめました。
(2023.04.18)
★★★
掟上今日子シリーズ第8弾。薄っ!って感じでしたが、今回は1編の中編のみを収録。
旅行会社で冤罪の退職金代わりにフランスにやってきた厄介だったが、なぜか今日子さんを見かけた。 1日寝ると記憶がリセットされる今日子さんがなぜ海外に? そして目を離したすきに「探偵・掟上今日子」ではなく「怪盗・掟上今日子」が誕生!?
自分が「怪盗」だと思い込むと、性格まで普段と変わる今日子さんが面白かったです。
(2023.04.11)
★★★
魔法使いシリーズ完結編。前作の最後で行方不明となってしまったマリィだが……。
なんやかんやで魔法のかかった婚姻届を提出してしまい、夫婦になってしまった聡介とマリィ。 お幸せに。
(2023.03.19)
★★★
八王子を舞台にした魔法使いシリーズ第3弾。いわゆる倒叙もので、マリィの魔法で犯人は早々に判明するものの、 それでは逮捕できないので何とか証拠or自白をさせようとヘタレ刑事の聡介が奮闘する、というフォーマット。
久しぶりにこのシリーズ読みましたが、そういえば登場人物が(犯人含めて)全員ポンコツでした。 熟女好きでドMな聡介、その上司で独身、「出会い系捜査」で婿探しに余念のない椿姫。 マリィがなぜ聡介に惹かれているのかがわからないのですが、まあそうしないと話が進まないからですかね。
次でこのシリーズ完結のようです。
(2023.03.13)
★★★
イニシエーション・ラブ、セカンド・ラブに続く、「ラブ」シリーズ第3弾。 今度は短編集。
「夫の余命」は何かで読んだことあるなあ、と思ったら、アンソロジー神様の罠収録作ですね。
「xx・ラブ」シリーズは、女性不信になるようなヒドい女性が出てくるのが常ですが、 今回は出てこないなあ……と思ったら、書き下ろしの「数学科の女」がそんな作品でした。
普通に「HEARTFUL LOVE」だと思っていたのですが、帯を外したら「HURTFUL LOVES」でした……。
(2023.02.19)
★★★
下戸だったはずの先輩刑事の殺害現場に残されていたビアマグ。 第一発見者が聞いた、「死んだはずの娘」の悲鳴は何だったのか?
特定の飲み物を入れると、死者の意識が戻るという「不思議なマグカップ」を巡る連作短編。 後半の話になると、さらにその飲み物を他者が飲むことにより死者の意識が「憑依」できることが判明し、 さらに複雑になっていきます。一定のルールの下でロジカルに推理が行われる「SF新本格」の流れを汲むものですが、 官能表現も多いので、読者を選ぶかも。
(2023.02.03)
★★★
腕貫探偵シリーズ第7弾。ついに腕貫さん、4作品中1作品にしか登場しなくなりました。 残り3作品中2作品もほぼユリエが探偵役だし、もう1作は櫃洗が舞台だというだけだし。
(2023.01.23)
★★★
腕貫探偵シリーズ第6弾。どんどん腕貫さんの影が薄くなりますね……。 ある意味「探偵役なんてただの舞台装置」というメッセージなのか。 「指輪もの騙り」に至っては腕貫さん登場しないし。 一番腕貫さんの存在価値が強いのが、幽霊相手の「追憶」っていうのも面白いですね。
(2023.01.22)