推理小説の部屋

ひとこと書評


スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎001/日本推理作家協会 編・東野圭吾 選 (講談社文庫)

★★★☆ 

日本推理作家協会が毎年出している「ザ・ベスト・ミステリー」というアンソロジー。 既に「選ばれた」その珠玉の作品群から、さらに10年飛びに3冊、 その短編集の中から選者が選んだ、まさに「ベスト・オブ・ベスト」なアンソロジー、 それがこの「スペシャル・ブレンド・ミステリー」シリーズらしいです。 通常のアンソロジーのように「選ぶ」のではなく、既に選ばれた作品群から、 選者のセンスで調合・ブレンドしていく、というイメージだそうです。

記念すべき第1弾は、選者に東野圭吾を迎え、1970年、80年、90年の3冊の短編集からのセレクション、となっています。 顔ぶれは、松本清張、筒井康隆、赤川次郎、日下圭介、高橋克彦、連城三紀彦、小杉健治、宮部みゆき、 という面々で、ベテランからベテランまで、有名どころが並んでます。

どの作品もさすが「ベスト・オブ・ベスト」という出来で、 一捻りある作品が集まってます。また、巻末の東野先生の解説もなかなか面白いです。

久しぶりに「サボテンの花」を読み直して、やっぱりいい作品だなあ、と思いました。

(2006.09.28)


夜のピクニック/恩田陸 (新潮文庫)

★★★★☆

北高の年中行事、「歩行祭」。全校生徒が、丸1日夜通しかけて歩く伝統のイベント。 3年となった融たちにとっては高校生活最後のイベントとなった。 貴子は最後のイベントを迎えるにあたり、ひとつの「賭け」をひそかにした。

というわけで、第2回本屋大賞受賞作、今月の映画封切りを前に、急遽文庫が発売されました。

恩田さん得意の青春ものなので、もう安心してとっぷりと浸れます。 融と貴子の間の「秘密」を軸にして進むんですが、 それ以外にもアメリカに行ってしまった杏奈の「おまじない」や、 去年の歩行祭に参加した「幽霊」の少年、 融、忍、貴子、美和子、それぞれの心情もよく描かれており、 たった24時間とは思えない濃い中身になってます。 読後感の爽やかさも抜群。映画も観てみたくなりました。

「図書室の海」収録のプロローグも読み返してみないとなあ。

(2006.09.23)


神のロジック 人間(ひと)のマジック/西澤保彦(角川文庫)

★★★☆ 

《学校》に集められた6人の生徒たち。隔離された《学校》で暮らす彼らと、 彼らを世話する《校長》《寮長》《寮母》たち。一体彼らを集めた目的は何なのか。 毎回謎を提示される《実習》の意味は?彼らの周りで引き起こる奇妙なできことの理由は? そして新入生が来る度に目を覚ますという《悪いもの》の正体は何なのか?

何とも奇妙な作品でした。半分を越すまで事件らしい事件もおきない。 生徒たちが互いの知っている情報を持ち寄って、仮説を作り上げてはディスカッションする様子は、 「タック&タカチシリーズ」などでもお馴染みの酩酊安楽椅子探偵ぶりを彷彿とさせます。 ただ大きく異なる点は、当事者たちが自分たちの置かれている状況に対して推理をしている、という点。 この点で、探偵役がすなわち事件の当事者でもある、という何とも奇妙な舞台ができています。

そして終盤の畳み掛けるような展開。すべての謎が一点に収束していく様は、 うーんさすがとしかいいようがありません。 これはもう読んだ者にしか味わえない感覚なので。 ただタイトルから想像していたのとは随分と違った作品でした。

(2006.09.22)


天使と悪魔/ダン・ブラウン (角川文庫)

★★★★☆

大ベストセラーとなった「ダ・ヴィンチ・コード」。 そのロバート・ラングドンシリーズの第1弾。

ヨーロッパの最先端の科学研究所・セルン。その研究所の地下から、 誰も知らないはずの反物質が何者かに盗まれた。 核の数十倍のエネルギー効率を持つ反物質が、安全な状態に保たれるリミットは24時間。 そんな時、コンクラーベが始まったヴァチカンで、古の秘密結社・イルミナティからの恐るべき宣戦布告が届いた。

科学対宗教、という構造としては「ダ・ヴィンチ・コード」と同じですが、 こちらの方が「反物質爆発」というタイムリミットがある分、緊張感は上ですね。 上下対称なアンビグラムも見事でした。

各キャラの特技が、いちいち後の展開の伏線となっているところも、 いかにも第一作という感じでした。二作目以降じゃこうはいかないですからね。

映画化したら、こちらの方がアクション要素満載なんで、受けるんじゃないかなあ。

(2006.09.16)


Shelter/近藤史恵 (祥伝社文庫)

★★★☆ 

カナリヤは眠れない茨姫はたたかうに続く、 整体師・合田力シリーズの第3弾。

「中国へ行く」と行って妹・歩たちの前から姿を消した恵。 そんな恵の元に転がり込んできた一人の少女。 二人の運命が交差する。

小松崎、歩、恵、といった面々は健在。 今回は歩の元から恵の失踪を探るパートと、 恵の元に転がり込んできた少女・いずみの失踪とが、 巧妙に絡み合いながら進んでいきます。 恵・歩姉妹の過去や、合田先生の過去も少しずつ明らかになったりして、 シリーズ的にも興味深い作品になってます。

しかしこのシリーズ、一歩間違うと相当暗い話になりそうなんですが、 合田先生と小松崎のキャラクターでかなり救われている部分がありますね。

(2006.09.05)


火天風神/若竹七海 (光文社文庫)

★★★☆ 

三浦半島に聳え立つ孤立したリゾートマンション。 不倫カップル、不登校の甥と叔父、大学映画研究会の面々、 元教師のやもめ、耳の不自由な少女、家出中の人妻、そしてやる気の管理人など 十数人の滞在客がいた。 そんな時、最大瞬間風速70メートル超の超大型台風が直撃。 高波、強風、さらに火事に、死体。 彼らの運命は?

パニック・サスペンス小説。そこに死体も盛り込んで、ちゃんとミステリ風味もまぶしてあるところはさすが。 最初は登場人物がどれも皆一癖二癖もあって、なかなか感情移入できずに読み進んでいったんですが、 中盤からの畳み掛けるような展開にはもう目が離せなりました。

散々ひどい目に遭わされて、人も死んでいるというのに、 意外なほどの読後感の爽やかさはなんだろう。 エピローグで田村夫妻がその後どうなったのか明かされなかったのがちょっと残念でしたけど。

(2006.09.02)


フェルマーの最終定理/サイモン・シン (新潮文庫)

★★★★ 

xn + yn = zn (n≧3) を満たす整数x,y,zは存在しない。

フェルマーが余白に書き残したこの「定理」。この証明をめぐる3世紀もの数学者の挑戦を丹念に描いた、 非常に読み応えのある読み物になってます。

数学に詳しくない人にもわかるように、ピタゴラスの定理から、 非常に丁寧に描かれているので、数式の意味がわからなくても十分楽しめるのではないでしょうか。 「栄光無き天才」エヴァリスト=ガロアの悲劇、なども描かれていて、 数学者たちの伝記として読んでも面白いと思います。 日本人数学者が意外な貢献をしていたのも、知りませんでしたし。

しかし単なる整数の簡単な方程式のように見えるのに、 それを証明するためには楕円方程式、モジュラー形式、群論、そして数学の大統一論、 といった最先端の数学のテクニックを駆使しなければならなかった、 というのは興味深いですね。

(2006.08.27)


月に吠えろ! 萩原朔太郎の事件簿/鯨統一郎 (徳間文庫)

★★★  

実在の詩人・萩原朔太郎は、実は名探偵でもあった? 大正から昭和初期を舞台に、萩原朔太郎が活躍する連作短編集。

一休さんが名探偵だったり、森鴎外がタイムスリップしたり、 実在の人物を組み込んだミステリを書くのが得意な鯨統一郎さんですが、 今回は詩人・萩原朔太郎。 女好きな朔太郎が、依頼人(大抵美女)に頼まれた事件を解決して、 最後にその事件からインスピレーションを受けたと思われる詩を示す、 という構成。

タイトルの「月に吠えろ!」が「太陽にほえろ」のパロディだったことに、 解説読むまで気付かなかった…未熟…。「山さん」やら「ボス」やら、 パロディしていたのはわかったんですが。

「タイムスリップ森鴎外」とのクロスオーバーのような記述もあったりして、 ちょっとクスッとしたり。

(2006.08.26)


林真紅郎と五つの謎/乾くるみ (光文社文庫)

★★★  

妻を失くし35歳の若さで「隠居」生活に入った元法医学者の林真紅郎。 身長190cmを越す長身の彼の周りで起こる様々な謎に対して、 「シンクロ推理」によって答えを見つけ出す。

新シリーズ。乾くるみさんの作品の中では、一番一般よりというか、普通のミステリですね。 事件とは呼べないような、偶然が偶然を呼んで起こった不可思議な現象を解き明かす、 という意味で、「犯人」が必ずしも存在しない事件も扱われています。 しかしこの「シンクロ推理」ってのはどうなんだろうなあ。 いまいちわかるようなわからないような…。最初の推理は間違ってることも多いし。

連作短編ならではの仕掛け(5つの短編を縦断するような)があると面白かったんですけどね。

(2006.08.20)


ロミオとロミオは永遠に(上)(下)/恩田陸 (ハヤカワ文庫)

★★★☆ 

20世紀以降の大消費時代のツケにより、廃棄物・化学物質が蔓延し人が住めなくなった2x世紀の旧地球。 国連は日本人だけを旧地球に残し、残りの国の民は新地球へと旅立つ決断を下した。 産業廃棄物の荒野を元に戻すためだけに従事する日本人。 生産や環境に貢献しない贅沢やサブカルチャーが一切封印された近未来において、 政府に家族全ての生活を保証される道は、「大東京学園」の卒業総代となることだけであった。 かくして、過酷な入学試験レースを潜り抜けた高校生達の弱肉強食の日々が始まる…。

恩田陸さんお得意の男の子の青春物。そこに振り混ぜられた20世紀サブカルチャーの嵐。 根本には大脱走劇。男同士の友情、喧嘩、兄弟愛、嫉妬、恋愛、etc.、etc.…。 ちょっと過剰なほど盛り込み過ぎな気もしますが、 そこは盛り込まれたサブカルチャーの量とバランスを取るために仕方ないところでしょうか。 設定や展開はかなりベタでしたが、そこのベタな展開も含めてパロディネタと考えるべきでしょうか。

基本的に脱走劇は好きなので、読んでいてハラハラしました。 アキラとシゲルのキャラもさっぱりしていていいですね。

しかし最近の恩田さんの作品ってみんな上下巻ですね。 たまにはコンパクトな作品も読みたいなあ…。

(2006.08.13)


DEATH NOTE ANOTHER NOTE ロサンゼルスBB連続殺人事件/西尾維新・大場つぐみ・小畑健 (集英社)

★★★☆ 

週刊少年ジャンプの大ヒット作「DEATH NOTE」のスピンオフ小説。 Lと南空ナオミが初めて組んで仕事をした「ロサンゼルスBB連続殺人事件」の真相をメロが記述した、 という内容になっています。ナオミ絡みでレイ・ベンパーもチョイ役ですが出てきます。 って関係者本編では全員死んでるし(笑)。

ネタバレは避けますけど、よくできたスピンオフ小説になっていると思いました。 スピンオフらしく、本編への絡め方がなかなか絶妙(犯人がワイミーズハウスの関係者、というだけでなく)。 本編そのものが一種のミスリードになっているのも見事。 竜崎の奇行に対して心の中でツッコミを入れる南空ナオミ、という構図もなかなかいい味出しています。 「虐殺南空」というあだ名をFBI内でつけられるほどの南空ナオミの活劇も堪能できるので、 南空ナオミファンの方は是非。 ただ、本編では結局曖昧なままだった南空ナオミの生死に関して、 死んだと断定されちゃってますけどね。うーん、惜しい人を亡くしたなあ。

最後の締め方もうまいと思いました。

(2006.08.11)


そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート/はやみねかおる (講談社文庫)

★★★☆ 

青空文庫でリリースされていた人気ミステリシリーズ、文庫化開始。

何事にも興味津々の三つ子姉妹の隣に越してきたのは、 全身黒尽くめのスーツに身を包み、自らを「名探偵」と呼ぶ夢水清志朗。 衆人環視の夏休みの遊園地で子供を次々と消す「伯爵」と対決する。

子供向けシリーズ、ということですが、 ホームズやルパンを読む時のような懐かしき雰囲気をまといつつ、 しっかりと本格ミステリになってます。大人にもお薦め。 全シリーズ次々と文庫化されていくのでしょうか。楽しみです。

(2006.08.03)


タイムスリップ明治維新/鯨統一郎 (講談社文庫)

★★★  

タイムスリップ森鴎外に続くシリーズ第2弾。 前作は森鴎外が現代にタイムスリップしてきてしまい、現役女子高生のうらら達と出会う話でしたが、 今作ではうららが単身、幕末の江戸にタイムスリップ。明治維新を阻止しようとする陰謀と立ち向かいながら、 何とか歴史通りに明治維新を引き起こし元の世界へと戻ることを目指します。

「銀魂」読んでるんで、出てくる重要人物はどれも皆聞いたことある名前ばかり。 逆にまだ銀魂に出てないキャラもその内出てくるのかな、とか思ったり。

歴史はほとんど知らないわたしですが、かなりわかりやすく重要事件が順を追って描かれているので、楽しめながら読めました。 また、森の石松、鞍馬天狗、リンカーンやノーベルの来日といった、 オリジナル歴史と違う展開も強引で面白かったです。

(2006.07.29)


麿の酩酊事件簿 花に舞/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

「QED」「試験に出るパズル」シリーズの高田崇史の新シリーズ。 勧修寺家の跡取り・文麿は、今日も理不尽な家訓に適う花嫁を募集中。 酒にめっぽう弱い文麿は、相手とのデート中いつも前後不覚に。 しかしその時全てを見通す探偵の人格が現れ、鮮やかに謎を解決していくのであった…。

漫画原作のノベライズ、ということで、設定もかなり漫画っぽいです。 漫画版の原作者・高田紫欄(しいら)って、高田崇史の別ペンネームなんですよね?? 「人形は××で推理する」のような多重人格探偵モノの変形と言えるかも知れませんね。

ライバルキャラ・七海(これもまたかなり漫画っぽいキャラですが)はどちらかというと出てきただけで終わってしまったので、 文麿との絡みは続編期待というところでしょうか。

(2006.07.25)


コッペリア/加納朋子 (講談社文庫)

★★★☆ 

了はが恋したのは人形だった。エキセントリックな天才・如月まゆらの手による人形達は、 天才自らの手で目の前で破壊されてしまう。 そんな了の前に、人形にそっくりの女優・聖が現れた。 人形に関わる者たちの運命が動き出す…。

加納朋子さん初の長編。ハートウォーミングな連作短編集でおなじみの加納さんの作風からすると、 主人公含めて随分とダークで退廃的な雰囲気に驚かされます。 了のパートと聖のパートが交互に描かれる構成。さらに第二章に入ってから三人目の視点も加わり、物語は一気に複雑化。 そして驚愕の真実へ…。

途中、誰もが違和感を感じると思うんですが、 やはりそこは仕掛けが施してあります(まあフェアかって言われるとちょっと際どいところもありますけど)。 第三章で、なるほど一応筋道は通ってるな、と。

色々あるけど、根本は恋愛小説なんだなあ、というのが感想でした。 後味の良さはさすが加納さん。

(2006.07.22)


虚空の逆マトリクス/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

短編集。中編「トロイの木馬」と、その他短編を6編収録。

内容は近未来SFやら、ハードボイルドやら、バリエーションに飛んでいてまちまちですが、 ミステリのフォーマットを守るからか、必ず「殺人」が絡んでいるのが律儀というか何と言うか。

そしてそんな収録作中唯一「殺人」の絡まないのが最後の犀川&萌絵シリーズの1編。 うわあ、ついに来るところまで来ましたね。これ、この続きって既にあるんでしょうか?

紅子シリーズの短編が載ってなかったのは残念。あのシリーズの続きってもうないんでしょうか?

(2006.07.18)


模倣密室 黒星警部と七つの密室/折原一 (光文社文庫)

★★★  

原点回帰?デビュー作「七つの棺」と同じく密室をモチーフとした七つの連作短編と黒星警部との物語。

密室好きが高じて、普通の事件でさえ密室事件にしてしまい、田舎の白岡町に飛ばされてしまった黒星警部。 そんな黒星警部が遭遇する七つの事件。 相変わらずコメディ色強めですが、面白かったです。

トリック(?)としては「邪な館 1/3の密室」に感心しました。 「本陣殺人計画」「交換密室」もなかなか。 犯人の思惑通りに進まないところがよかったです。

(2006.07.16)


殺人の門/東野圭吾 (角川文庫)

★★★  

殺人を犯す者と思いとどまる者。その間を隔てる物は一体何なのか? 人を殺すために必要な一線は何か? 一人の男の半生とそれを狂わせた男との奇妙な関係…。

幼い頃から人を殺すことに興味のあった男が主人公。 当然「白夜行」のように殺人を重ねていくのか、と思って読み進めていくと、 これがちっとも殺人を犯さない。 それはそれは丁寧に、ハメられていく様子が繰り返し描かれていき、 今度こそは、今度こそは、と読み進めていくのですが、やっぱり殺さない。 というわけで、主人公のヘタレっぷりにフラストレーションたまりまくりながら、 最後まで行ってしまいました。

いやまあ、最初からこういう作品だと思って読めば楽しめたのかもしれませんけど、 ちょっと期待と違っていたので…。まあさすがに途中からは切り替えて、 どうやって主人公がハメられていくのかを楽しむようにしましたけど。

(2006.07.13)


「神田川」見立て殺人 間暮警部の事件簿/鯨統一郎 (小学館文庫)

★★☆  

殺人現場を、70年代の歌謡曲の歌詞に無理矢理見立て、偶然の推理により犯人を当ててしまう間暮警部が活躍する連作短編集。

探偵役が立てた推理が、実は全然間違っているんだけれども、 なぜか結論だけは当たっていて犯人逮捕につながる、というのはコメディ系ミステリでは定番のプロット。 ただこのプロットは、同じ手掛かりから同じ結論に至る全く筋道の異なる2つの推理を組み立てる必要があるので、 一通りの推理を用意すれば良い普通のミステリよりも難しいと思われます。

しかしこの作品の場合、間暮警部の「間違った方の推理」が、あまりにぶっとんでるというか、 電波入っているというか、とにかく推理にもなってないような戯言なので、 正直ミステリとしてはいまいちですね。まあ、楽しみ方が間違ってるのかも知れませんが。 繰り返しの「お約束」を楽しむのが正しいんでしょうね。

また、個人的に選曲も70年代だと微妙にかすってるようでかすっていないようで、 という感じでいまいちでした。80年代だともう少しツボに来たかもしれないんですが。

(2006.07.07)


阿修羅ガール/舞城王太郎 (新潮文庫)

★★★  

三島由紀夫賞を受賞した、舞城王太郎の代表作。

アイコは幼馴染の陽治への想いを抱えて悩んでいた。 同級生と寝たことを理由にシメられそうになったアイコは、 その同級生が誘拐されたことを知る。 そんな中、街では暴走するグルグル魔人の正体を暴こうとアルマゲドンが勃発。 果たして街は、アイコは、アイコの恋はどうなるのか?

何ともカオティックな作品…。 特に第2部の3つの情景、アイコの内面世界の描写は圧巻です。 「天の声」という2chをモデルとしたネット掲示板が出てくるのですが、 その書き込みも非常にリアリティあって、いかにも現代的。

しかし最初の誘拐殺人(?)がそのまま放置されているところなんざ、 決してミステリじゃないんですよね。

(2006.07.07)


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