推理小説の部屋

ひとこと書評


ターン/北村薫 (新潮社文庫)

★★★★☆

スキップに続く、 「時と人」シリーズの第2弾。 文庫で出たので再読。1日で読んでしまった。もったいない…。

同じ一日を繰り返す、しかもそれを認識しているのは自分だけ、 というシチュエーションの作品はいくつかありますが (「リプレイ」ノススメ参照)、 そこに残されるのが1人だけ、というのは珍しいです。 この手の作品は、繰り返すパターンの中でリアクションがどう変わっていくのか を見せるのが常套手段。 一人しかいないのではその繰り返しパターンもすぐに尽きてしまうはず。 この作品は、時の意味を問う作品なので、敢えてこういう構成にしたのでしょう。

二人称で進む、というのもかなり特殊(他には「二の悲劇」くらいしか知りません)。 これはこれでちゃんと意味がつけられてます。

「リプレイ」のススメ中の紹介もどうぞ。

(2000.07.06)


麦酒の家の冒険/西澤保彦 (講談社文庫)

★★★☆ 

タック&タカチシリーズ(笑)の長編第2弾。ちょっと前に角川から彼女が死んだ夜が文庫化されたばかりですが、 示し合わせたように講談社からも文庫化。 これ、順番が逆だと大変なことになるんで (いや、それほど大事でもないが)、 出版社間でちゃんと順序を守って文庫化してくれるのは嬉しいですね。

第1弾に比べるとタカチがかなり魅力的に書かれています。 「長編で安楽椅子探偵物を」というコンセプトで書かれたそうで。 まあ、いつもの通りの妄想推理で面白かったです。

(2000.06.29)


トップラン 第2話 恋人は誘拐犯/清流院流水 (幻冬舎文庫)

評価保留

隔月文庫書き下ろしシリーズの第2弾。 前回の「トップランテスト」の採点表もついてます(私はやってませんが)。

2ヶ月ぶりに読む読者のことを考慮してか、 第1話で入っていた家族構成などの説明が繰り返し出てくるところが、 ちょっとわずらわしく感じてしまいました。 だからページ数の割には物語はあんまり進んでないですね。 どうも第3話から一気に話が展開するようなので、期待したいところです。

(2000.06.23)


英国庭園の謎/有栖川有栖 (講談社文庫)

★★★  

火村&有栖シリーズの「国名シリーズ」、第4弾。 短編集です。有栖川有栖さんは、ホント短編を良く書いてますね。 江神&有栖シリーズの短編集も早く文庫にならないかなあ。

6本の作品が収録されてます。 一押しはやっぱり表題作の「英国庭園の謎」かな。 暗号もので面白かったのは久しぶりです。

(2000.06.20)


ミステリーアンソロジー不在証明崩壊(アリバイくずし)/浅黄斑・芦辺拓・有栖川有栖・加納朋子・倉知淳・二階堂黎人・法月綸太郎・山口雅也 (角川文庫)

★★★  

アリバイトリックに関する作品を集めたアンソロジー。 有名どころが揃ってるので、安心して読めますね。

今回既読だったのは、「バラ迷宮」収録の二階堂黎人の蘭子ものと、 「パズル崩壊」収録の法月綸太郎の「シャドウ・プレイ」でした。 ノリリン、早く新作書こうよ。

有栖川有栖さんってこの手のアンソロジーに必ず参加してますが、 ダブってるのを見たことがない…。と思ったら「三つの日付」は、 今月発売になった「英国庭園の謎」に収録されていました。 なんだ、「ナスカ地上絵の謎」じゃなかったのか(←誇大広告)。

加納朋子さんの「オレンジの半分」が、ほのぼのとしてて良かったです。

(2000.06.16)


彼女が死んだ夜/西澤保彦 (角川文庫)

★★★  

タック、タカチ、ボアン先輩が活躍するシリーズの第1弾。 シリーズものだ、ということは聞いていたのですが、ちっとも文庫にならないので、 本当に出てるの?とか思ってたんですが。 どうやら、角川やら講談社やら色々な版元に分かれているようですね。

で、その第1弾なのですが、キャラクターはなかなか魅力的。 でも後味はかなり悪いですね。どうもこのシリーズはそういう傾向らしいですが。 久しぶりに「解体諸因」を読み返してみたくなりました。

(2000.06.03)


カナリヤは眠れない/近藤史恵 (祥伝社文庫)

★★★☆ 

文庫書き下ろし。 「探偵役」として関西弁のマッサージ師を配した、ちょっと変わったミステリです。

カード破産したことのある浪費癖のある女性と、 三流雑誌記者の2人の視点から書かれるパートが交互に現れます。 特に雑誌記者パートの登場人物が生き生きとして描かれていて、 好感が持てました。

(2000.06.03)


キッドピストルズの妄想/山口雅也 (創元推理文庫)

★★★☆ 

キッドピストルズシリーズの第2弾。 キッドの推理は第1弾よりもさらに鋭さを増し、 もはや「妄想」の領域へ。 本格好きには楽しみなシリーズですね。

早く「十三人目の探偵士」が文庫化されないかなあ。

(2000.06.03)


星を継ぐもの/J.P.ホーガン (創元SF文庫)

★★★★ 

たまにはSFでも、ということで。

いや、面白かったです。タイトルは聞いたことあったんで、 結構古典なのかな、と思ったら70年代後半に書かれた、 比較的新し目の作品だったんですね。 続出する、謎また謎。それらを解決する説が現れるが、 またそこに新たな謎が…というわけで、ミステリとして読んでも、 よくできた作品だと思いました。何でも3部作らしいですね。

しかし、戸田尚伸の「惑星をつぐ者」と、 J.P.ホーガンの「星をつぐもの」を両方読んでいて、 しかも戸田尚伸の方を先に読んだ人って、 日本にどれくらいいるんだろう…

(2000.05.20)


キッド・ピストルズの冒涜/山口雅也 (創元推理文庫)

★★★☆ 

小説の中の探偵たちが「探偵士」として活躍する、 パラレルワールドの英国。 マザーグースの童謡に見立てられる事件の謎に、 パンク刑事のキッド・ピストルズが挑む。

マザーグースを基調とした連作推理。 パロディ風で、コミカルにかかれていますが、 内容はしっかりとした本格もの。 本格・童謡殺人への愛がヒシヒシと感じられます。

(2000.05.11)


トップラン 第1話 ここが最前線/清流院流水 (幻冬舎文庫)

評価保留

「グリーンマイル」の向うを張って、 文庫書き下ろしで隔月で1巻ずつ、6冊(つまり1年間)発行されるそうです。

幸せな家族に囲まれた、探偵志望の女子大生である主人公は、 ある日「よろず鑑定士」と名乗る怪しい男から33問のテストを渡される。 全問答えるだけで100万円が手に入り、 さらにその答えによっては巨額を手に入れられるチャンスだというのだが…?

「グリーンマイル」全6巻を友達から借りて一気読みした私が言っても説得力ないですが、 こういうのはやはりリアルタイムで追っかけるのが醍醐味ですね。 今のところ「つかみはOK」というところでしょうか。 探偵の「パパさん」がどう絡んでくるのか楽しみ。

(2000.05.01)


鳥人計画/東野圭吾 (新潮文庫)

★★★☆ 

日本スキージャンプ界の頂点に立つ選手が迎えた突然の死。 その死因は毒殺だった。一体誰が、なぜ?

スキーのジャンプ競技を題材にしたミステリ。 トレーニング方法など、非常に詳しく書かれており、 きちんと取材したんだろうな、ということがわかります。

(2000.04.28)


もつれっぱなし/井上夢人 (文春文庫)

★★★☆ 

全編、会話だけで構成された変わった短編集。 それぞれに「宇宙人の証明」や「狼男の証明」と言ったタイトルがついてます。 タイムパラドックスものが大好きな私としては、 やっぱり「44年後の証明」が好きですね。

(2000.04.15)


ダブルダウン/岡嶋二人 (講談社文庫)

★★☆  

ボクシングの試合中、突然両者が死亡。 しかもその原因は青酸中毒だった。 衆人環視の中、いかにして犯行は行われたのか?

冒頭のつかみはよかったのですが、 特に目立ったトリックもサスペンスもなく、 淡々と最後まで行ってしまったような印象を受けました。 解説を読んでも、作者たちも失敗作だと思っているようですね。

(2000.04.15)


アナザヘヴン/飯田譲治・梓河人 (角川ホラー文庫)

★★★☆ 

「NIGHT HEAD」「沙庄妙子」の飯田譲治の書く小説。 連続猟奇事件を追う、2人の刑事。SF入ってます。 なかなか面白かったです。

しかしこんなのテレビドラマ化できるのかよ?と思ったら、 こちらの話は映画になるんですね(R15指定らしい)。 テレビの方は、オリジナルストーリーなんだって。

(2000.04.08)


封印再度/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

殺人そのものの謎は、はっきり言って拍子抜けという感じですが、 壺と鍵のパズルは面白かったです。

(2000.04.08)


正月十一日、鏡殺し/歌野昭午 (講談社文庫)

★★★  

短編集。面白いことは面白いのですが、救いがなさ過ぎます。

(2000.03.25)


人格転移の殺人/西澤保彦 (講談社文庫)

★★★★☆

人格転移マシーンに入ってしまった6人の男女。 彼らは突然お互いの人格が入れ替わる「マスカレード」に襲われてしまう。 そしてその混乱のさなか、連続殺人事件が起こる。 一体、犯人の人格は誰だったのか?

いいなあ。やっぱり西澤保彦はSF系新本格に限りますね。 混乱すること必至ですが。

(2000.04.08)


模造人格/北川歩実 (幻冬舎文庫)

★★★☆ 

死んだはずの少女にそっくりの少女。 その記憶は果たして作られたものなのか?

登場人物にまともな奴がほとんどいないのが、なんとも。 まあよくできてるとは思いますが、ちょっと疲れました。

(2000.04.08)


十三番目の人格・ISOLA/貴志祐介 (角川ホラー文庫)

★★★☆ 

基本的に、多重人格ものは好きなので、かなり面白く読めました。 前半と後半でガラリと雰囲気が変わりますね。

オチがいかにも「ホラー文庫」って感じ?

(2000.04.08)


バースデイ/鈴木光司 (角川ホラー文庫)

★★★  

リング・らせん・ループに登場する3人の女性をそれぞれ主人公にした、 オムニバス3編。しかし「ループ」がまだ文庫化されていないというのに、 こちらが先に文庫化されてしまいました。映画「リング0〜バースデイ」 の公開に合わせたんでしょうが、これに収録されている「バースデイ」は、 「ループ」の完全なネタバレになっているので、注意。 絶対に「ループ」を先に読むべきです。

(2000.04.08)


バラ迷宮/二階堂黎人 (講談社文庫)

★★★  

やっぱり「名探偵もの」はいいなあ、と久しぶりに読んで思いました。 こればっかり読んでると飽きるけど、「戻ってくる場所」という安心感がありますね。

二階堂蘭子の新シリーズはいつ始まるのかな?

(2000.04.08)


クローディアの告白/ダニエル・キイス (ハヤカワ・ダニエルキイス文庫)

★★☆  

「アルジャーノン」「ビリーミリガン」のダニエル・キイスが書く、 事実を元にしたノン・フィクション小説。

うーん、かなりストレスたまりますね、これは。 事実なんだからしょうがないとは言え、それほど面白いわけでもない事件の経過を、 延々と述べられて、しかも真相を話したのかと思えばそれは嘘で、 ということが延々と繰り返され…。 しかもビリー・ミリガンのように派手なわけでもないし。

創作の「五番目のサリー」の方がずっと面白かったです。

(2000.01.19)


第八の日/エラリー・クイーン (ハヤカワミステリ文庫)

★★★  

久々にエラリー・クイーンを読みました。

ハリウッドからの帰り道、砂漠で迷ってしまい、 文明から隔絶したある村に辿り着く。 なぜか「予言者」として迎えられてしまうエラリー。 そして「犯罪」という概念がないこの村で、殺人事件が起きる。 一体犯人は…?

やっぱりキリスト教をあまり理解していない日本人にはわかりにくいかなあ。 クイーンの作品には結構宗教絡みの作品がありますね (「十日間の不思議」は「十戒」をモチーフにしてたし)。

(2000.01.10)


←ひとこと書評・インデックス
←←推理小説の部屋へ
→自己満・読破リスト
→推理小説関連リンク
!新着情報

↑↑趣味の館へ

KTR:ktr@bf7.so-net.ne.jp