推理小説の部屋

ひとこと書評


エデン/近藤史恵 (新潮文庫)

★★★☆ 

サクリファイスの続編。 ツール・ド・フランスに挑むことになったチカ。 しかしスポンサーが降りてチームは解散、さらにフランスの新星にはドーピングの噂が……。

今度は、チーム間での共闘や犠牲、そしてドーピング問題を扱ってます。 チカの、あくまでも脇役に徹する姿勢は、もどかしくもありますが、 日本人として誇らしくもありますね。

(2012.12.31)


目薬αで殺菌します/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

Gシリーズ第7弾。Xシリーズに移行したから、もうGシリーズは無いのかと思っていたら、 まだ続くんですね。

Gシリーズの裏で暗躍する真賀田四季の存在が何となく明らかになるんですが、 シリーズとしては完結したんだかしないんだかよくわからない感じですね。 GもXも続編はまだ書かれていないようですし……。

加部谷さんは頑張ったと思います。

(2012.12.29)


山内一豊の妻の推理帖/鯨統一郎 (光文社文庫)

★★★  

五十石の足軽から、土佐の大名にまで登り詰めた山内一豊。その陰には、妻・千枝の名推理があった!?

歴史のエピソードと推理物を絡めた短編集。 史実と虚構を絶妙に絡めてありますね。

(2012.12.22)


都会のトム&ソーヤ(3) いつになったら作戦終了?/はやみねかおる (講談社文庫)

★★★  

「都会のトム&ソーヤ」シリーズ第3巻。 内人の重要な計画「S計画」。創也とイメージトレーニングに出た内人を襲う謎の人影? そして文化祭の学校に紛れ込んだ現金輸送車襲撃犯の正体は?

創也と内人のクラスでの立ち位置というのがよくわかるエピソードでした。 しかし内人は色々と報われないですね……。

(2012.12.20)


演じられた白い夜/近藤史恵 (実業之日本社文庫)

★★★  

演出家の匠と、小劇場界の著名女優・麻子は、仮面夫婦だった。 匠が、雪深い山荘に無名の八人の俳優・女優を集めて企んでいたのは、 新作の本格推理劇。演じる側には犯人がわからないように稽古は進んでいった。 しかしその内、台本の内容をなぞるように、現実に死者が……。

作品の中の現実と、作中作とがリンクしていく、という展開は結構好きなんで、 結構期待して読み進んでいったんですが、ちょっと肩透かし気味だったかなあ、 というのが正直な印象。近藤さんの作風ともちょっと違うなあ、 という印象を受けたんですが、1998年の作品だったんですね。 学生時代演劇をやっていた、というのも知りませんでした。

(2012.12.14)


ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦 (角川文庫)

★★★☆ 

小学四年生のアオヤマ君は、何でもノートに書き留める研究熱心な哲学者で、 歯科医のお姉さんとおっぱいが大好き。そんな彼の前にペンギンやら『海』やら、 様々な謎が現れる。そしてそれらの謎は全てお姉さんと繋がっているのであった。

森見先生の作品は、天狗が出てきたり、四畳半が異空間と繋がっていたりと、 どこかファンタジー要素をいつも含んでいますが、今作はさらにファンタジー色が強いですね (読後に帯を読んで気づきましたが、第31回日本SF大賞受賞作だったんですね)。

主人公が小学生に設定されていることもあり、まあ主人公自体は小学生っぽくないですが、 周りが小学生っぽいこともあって、非常にジュブナイルな雰囲気があって、 冒険やら宇宙やら友達のことやら女の子のことやら、小学生っぽくて良かったです。 主人公を「少年」と呼ぶお姉さんのキャラがなんとも良いだけに、読後感は何とも切ないですね。

(2012.12.12)


動機、そして沈黙/西澤保彦 (中公文庫)

★★★  

西澤保彦先生のノンシリーズ短編集第2弾。 前作「パズラー 謎と論理のエンタテインメントが、 ロジカルな本格系だったのに対して、今回は西澤さんのフェティシズム趣味全開で、 決着もサイコチックだったりと結構変わった系の話が多かったです。

西澤さんの作品ではままあることなんですが、何しろ一人称の語り部である刑事自身が、 ちょっと普通でない嗜好の持ち主だったりするので、 なんというか、感情移入できずに客観的に眺めてるような感じですかね。

(2012.12.08)


SOSの猿/伊坂幸太郎 (中公文庫)

★★★☆ 

エアコン販売の傍らで「悪魔祓い」を副業とする「私」こと遠藤二郎。 株の誤発注事件の原因を追究する五十嵐真。 それを語るのは孫悟空?果たしてバラバラに見える事件の数々にどんなつながりがあるのか?

「私の話」と「猿の話」が交互にあらわれる、伊坂作品ではおなじみの構成。 特に「猿の話」の方は、現実なのか妄想なのかファンタジーなのか、 よくわからない描写が多くて、それが強烈な違和感になっています。

バラバラの事件やエピソードが繋がって行くところは快感ですね。 いまいち予想通りの結末に収まらない肩透かし感もありますが。

(2012.12.02)


JORGE JOESTAR ジョージ・ジョースター/舞城王太郎×荒木飛呂彦 (集英社)

★★★  

ジョナサンの息子にして、リサリサの夫、ジョセフの父。 波紋の才能は無く、パイロットだったが、 上官の正体が屍生人であると気づき追及するうちに返り討ちにあって死亡。

そんな地味な「ジョージ・ジョースター」をどうやって料理するのかと思いましたが、 いやあさすが舞城王太郎、やりたい放題ですね。 1904年のイギリスと、2012年の別世界の西暁町を繋げてしまい、 自身のシリーズに出てくる九十九十九をはじめとする名探偵たちを出演。 さらに杜王町とネーロ・ネーロ島自走式にして寄せてしまうことで、 第4部のキャラとパッショーネの人達まで登場。 さらに火星にまで行ってしまって、カーズまで連れ帰ってしまい、 歴代ボス:ディオ、カーズ、吉良吉影、ディアボロ、プッチ神父、ヴァレンタイン大統領、 が全て競演という無茶っぷり。誰もが一度は考えたであろう、 「もしカーズがスタンドを身につけたらどうなるんだろう」みたいなノリもちゃんと書かれてます。

別世界の虹村兄弟が不可思議と無量大数だったりするのも笑いました。 ジョジョのキャラとシステムを使って、舞城王太郎風に好き勝手やった、 という感じですね。正直ジョジョファンにはあまりオススメできないかも。

(2012.11.25)


奇面館の殺人/綾辻行人 (講談社ノベルス)

★★★★ 

館シリーズ第9弾。いつの間にか出ていたんですね。普段文庫しかチェックしていないので、 気付きませんでした。

奇面館の主人・影山逸史に招かれた6人の男達。 主人の前では必ず仮面を付けることがルール。 十年ぶりの大雪によって孤立した館の中で、翌朝首無の死体が転がっていた。 そして招かれた客は、全員鍵が無いと開けられない仮面が被らされていた……。

首を持ちされれた死体。そして招待客は全て仮面をつけられて、となると、 当然入れ替わりが?という想像をしながら読み進むわけですが、 しかしそこはそれ、ちゃんとした理由付けがなされています。

「秘密の通路」みたいな仕掛けも、普通の本格ミステリで出てきたら「フェアじゃない」 ってなりそうですが、「中村青司の建てた館じゃしょうがない」みたいな、 妙な説得力があって納得できてしまいます。

犯人の行動を読み解くあたりのロジック(ホワイダニット)は素晴らしいのですが、 犯人を特定するところのロジック(フーダニット)がちょっと弱かったかなあ、 という印象も。状況証拠の積み重ねというか。

これでいよいよ館シリーズも残るは一作。気長に楽しみにしてます。

(2012.11.23)


死ねばいいのに/京極夏彦 (講談社文庫)

★★★☆ 

自宅マンションで何者かに殺されたアサミという女性。 彼女の「知り合い」だと称する学も無い職も無い無礼な男が、 彼女の関係者に彼女のことを聞いて回る。派遣先の上司、隣人の女性、 囲っていたヤクザ、母親……。そして彼らはやがて自分の不満をブチ撒けた上で、 その男に言われるのであった。「死ねばいいのに」―――。

無礼で学も無いはずのケンヤが、いつの間にか相手を正論で追い詰めていく様子が痛快。 クライマックスの「死ねばいいのに」は、本来他人に面と向かって言うべき言葉ではないにもかかわらず、 京極堂の憑き物落としにも通じるお約束感というか、「待ってました」感がありました。 一方で、事件の真相には、驚かされると共に、薄ら寒いものを感じました。 この作品の中で、本当に怖いのは一体誰?

(2012.11.21)


タイムスリップ忠臣蔵/鯨統一郎 (講談社文庫)

★★★  

もし赤穂浪士の討ち入りが無く、「生類憐みの令」が400年以上続き、 犬が人間を支配する世の中になっていたら……? ウララ達は、討ち入りを成功させるために、過去にタイムスリップする。

これまでは過去にタイムスリップした結果として本来の歴史が改変されてしまう、 みたいな感じでしたが、今回は最初から「if」の歴史が示されていて、 それを修正しに過去にタイムスリップする、という構成。 よりSF色が濃くなってます。 ウララたちも年代が違うし、これまでのシリーズに出てきたキャラ達とは、 別キャラというか、別の時間軸における子孫、みたいな位置づけなんでしょうね。

夜桜お七やらAKB48やらギンガに赤目やら、 相変わらずどこをターゲットにしているのかよくわからないギャグが満載でした。

(2012.11.20)


零崎曲識の人間人間/西尾維新 (講談社文庫)

★★★  

「自殺志願(マインドレンデル)」零崎双識、「愚神礼賛(シームレスバイアス)」零崎軋識に並ぶ、 「零崎一賊の三天王の一人、「少女趣味(ボルトキープ)」の零崎曲識登場。 零崎一賊の中でも「菜食主義」と呼ばれ、自分で定めたルールに従って殺人をする彼の秘密とは?

曲識のパーソナリティ確立の裏には、「赤い最強の請負屋」の影があったんですね。

零崎一賊全滅の話と、戯言使いとの戦いの話、のあたりの時間軸が完全に混乱してわからなくなってしまいました。 どこかで整理してあるかな……。

(2012.11.18)


毒草師 白蛇の洗礼/高田崇史 (朝日文庫)

★★★  

毒草師シリーズ第2弾。濃茶を回して飲む茶の席で、一人の男が毒殺された。 皆が同じ物を口にしたはずなのに何故?無差別殺人なのか?

毒殺事件と、千利休=キリシタン説の検証が、並行して進むという「QED」シリーズと同じような構成。 QEDのタタルが基本的に語り手の奈々と同行するのに対して、 毒草師の御名形史紋は、語り手の西田とは基本的に別行動なので、 より変人度が上がっているように見えますね。

(2012.11.15)


神去なあなあ日常/三浦しをん (徳間文庫)

★★★☆ 

横浜の高校に通い、特に就職先も決まらず、フリーターになるんだろうなと思っていた平野勇気は、 高校卒業と同時に親と教師の陰謀により、三重県の山奥にある「神去(かむさり)」という村に放り出される。 そこは携帯の電波も通じず、林業のみが生業となる村だった……。

ある意味「お仕事小説」なんですが、日本の過疎の村の縮図だったり、 日本の伝統だったりの描写が細かくて、なかなか考えさせられるものもあります。 しかしそこはユーモアたっぷりに描写されているので、あまり深刻にもならず。

続編(後日談を含めた番外編?)もあるみたいなので、楽しみです。

(2012.11.11)


扉守 潮ノ道の旅人/光原百合 (文春文庫)

★★★☆ 

広島の「潮ノ道」を舞台とした、少し不思議な話の短編集。 「尾道」がモデルとなった架空の小さな町で繰り広げられる、さまざまな奇跡。

了斎さんという坊主が共通した登場人物ですが、 様々な人外の者も登場したりして、なかなか面白いですね。

(2012.11.04)


英雄の書(上)(下)/宮部みゆき (新潮文庫)

★★★☆ 

現代の少女が、「英雄」に魅入られて殺人を犯し失踪した兄を救うために、 「物語」の世界へと旅立つファンタジー。

……というあらすじだけからすると、「ブレイブストーリー」のような現代とファンタジーをリンクさせたようなRPGっぽい話を想像しますが、 全然違いました。「物語」というものの存在をメタ化した世界観の中で、 英雄譚から生み出される光としての「英雄」とその影である「黄衣の王」、 そして物語が産み出されては回収される「無名の地」「咎の大輪」「無名僧」…。 このメタフィクションな世界観の説明に1/3くらい費やされていて、 ユーリ自身の冒険自体は意外とあっさりとしたものだったり。

エピローグがしっかりと描かれていたのは良かったです。 ユーリのその後も見てみたいと思ったのですが、 どうやら続編は世界観だけ共通でユーリは出てこない模様……。

(2012.10.31)


都会のトム&ソーヤ(2) 乱!RUN!ラン!/はやみねかおる (講談社文庫)

★★★  

「都会のトム&ソーヤ」シリーズ第2弾。5番目のゲーム「ルージュ・レーブ」のクリエイター、 栗井英太からの招待状を受けて、館にやってきた創也と内人。そこには、 同じように招待状を受け取っていた4人の客がいた。 「ルージュ・レーブ」を巡るサバイバルゲームが始まった。

創也のお茶目な面が段々と明らかになってきますね。 そして内人のサバイバル術も段々と常人離れしていきますね。

(2012.10.28)


都会のトム&ソーヤ(1)/はやみねかおる (講談社文庫)

★★★  

竜王グループの御曹司でありながら「究極のゲームを創る」という夢を求めて、 秘密基地「砦」に籠る竜王創也。彼のクラスメートで平凡な中学生のようでいて、 実はサバイバル術に長けたワトソン役の内藤内人。 二人が繰り広げる都会の冒険とは?

はやみねかおるさんの新シリーズ。「夢水清志郎」シリーズより少し上の層をターゲットとしているらしいです。 子供らしさを残しつつ、四大ゲームネタなどでマニアックなミステリネタをブチ込んでくるあたり、 さすがはやみねさんですね(「なめくじにきいてみろ」も笑いました)。

既刊だけで10巻分あるそうなので、当分は文庫化ネタには困らないですね。

(2012.10.23)


厭な小説 文庫版/京極夏彦 (祥伝社文庫)

★★★  

厭な小説ばかりを集めた連作短編集。 厭な子供だったり、老人だったり、彼女だったり、家だったりするのですが、 共通して出てくるのは「深谷」という人物。 そして最終章ではその深谷自身がターゲットになり……。

とにかく読んでても厭な描写が続くので、ついつい斜め読みで進めてしまうところと、 ついついじっくり読み込んでしまうところとが交互に。 オチはどれも大体厭な感じです。一種のホラーなんですかね?

(2012.10.22)


カンナ 奥州の覇者/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

「カンナ」シリーズ第4弾。奥州の坂上田村麻呂と阿弖流為の戦いの真相に迫る。

甲斐が段々と能力に覚醒していくのがこのシリーズのウリらしいのですが、 今作では夜目が効くところくらいで、特に超人的な活躍は無し。

むしろ、貴湖の方が、最初の頃は才色兼備だったのに、 段々と弱体化が進んできて、今巻ではかなづちであることまで判明したりして、 段々と甲斐との立場が逆転しつつあるような。 今巻で甲斐に助けられたことでフラグが立ったかな?

忍びやら修験者やら闇のネットワークすげーな、というのと、 誰が敵で誰が味方なのかが入り乱れて来ましたね。

エピローグに出てきたカップル参拝客は、タタルと奈々ですね。

(2012.10.20)


身代わり/西澤保彦 (幻冬舎文庫)

★★★☆ 

ボアン先輩と一緒に飲み会をしていた後輩の一人が、飲み会で別れたその足で深夜の公園で女性を襲おうとして逆に自分の腹を包丁で刺して死亡した。 一方、成績優秀な美人女子校生が自宅で殺された現場には、一人の警官の遺体が。 その警官はタックの高校の同級生だった。 一見無関係に見える2つの事件と3つの死体だったが、やがてボアン、タック、タカチの推理のもと、 恐るべき悪意の存在が明らかになっていく……。

「依存」以来9年ぶりとなるタック&タカチシリーズの長編。 前作でダークサイドに堕ちてしまったタックの、復活の物語でもあります。 タック&タカチシリーズは西澤先生の作品の中でも特に楽しみにしているシリーズではあるのですが、 なにしろ9年(単行本でも9年の間が空いてましたが、文庫本でもきっちり9年空いてます。 しかも感想書いた日付も1日違い!)。あまりの長いスパンに、前作のことをほぼ忘れかけてしまうのがネックですねー。

タック&タカチが段々と「こっち側」に戻ってきてくれる様子が何とも良かったです。 タック&タカチ&ボアン&ウサコが漫才やってるところを七瀬刑事がツッコむ場面とか最高。 ボアン先輩は、七瀬刑事に猛アタックを仕掛けてるようですが、少しは脈アリなんですかね?

(2012.10.17)


まほろ駅前番外地/三浦しをん (文春文庫)

★★★★ 

「まほろ駅前多田便利軒」の続編・短編集。

今回は作品ごとに視点が異なるので、多田や行天が客観視されていて、なかなか新鮮でした。

ラストは多田に新たなロマンスの予感?今後も続編が書かれることはあるんでしょうか。 楽しみです。

(2012.10.12)


モラトリアム・シアター produced by 腕貫探偵/西澤保彦 (実業之日本社文庫)

★★★  

「女の園」の中高一貫私立女子校・通称MSJ。MSJのOGである母親の強烈な勧めで臨時の英語教師として雇われることになったミツヲは、 同僚の英語教師たちを巡る連続殺人事件に巻き込まれていく……。 文庫書き下ろし。

「腕貫探偵」シリーズに出てくる、腕貫さんを「だーりん」と呼ぶ、 やたらとグルメで男っぽい大富豪のお嬢様ユリエ。その兄であるミツヲが主人公で語り手。 しかしユリエやその母親の強烈なキャラクターに比べて、 マザコンでシスコンで熟女好きの草食系というミツヲのキャラは何とも頼りなく、 また女性関係にトラウマがあるらしく、記憶が曖昧なので、 一人称の証言は信頼しないで欲しい、と最初に断りが入る程(ある意味フェアなんですが……)。

腕貫探偵はチョイ役での登場ですが、もう一人出てくるド派手な富豪探偵は、 櫃洗市を舞台にしたまだ文庫化されていない「必然という名の偶然」という作品の探偵のようです。 こちらが文庫書き下ろしだから順番が逆転してしまったんですね。

ミツヲ視点なので仕方ないとはいえ、腕貫探偵とユリエの絡みのシーンがなかったのは残念。 あの二人のやり取り好きなんですよねー。

(2012.10.10)


謎解きはディナーのあとで/東川篤哉 (小学館文庫)

★★★☆ 

2011年本屋大賞第1位を獲得したベストセラーが文庫化。 毒舌執事と令嬢刑事が繰り広げる「安楽椅子探偵」もの短編集。

東川さんお得意のユーモアミステリ。さらにキャラクター度が増していて、 何と言っても毒舌執事の影山が、謎が解けた時に発する一言がいいですよね。

また、国立署が所轄なのですが、ついでに出てくるマルイ国分寺店やら、 いつまでも再開発の進まない国分寺駅北口などが、妙にツボにハマったり……。

単行本の方は3まで出るのが決まっているみたいですし、文庫化が楽しみです。 ただ、他のシリーズも忘れずに続編出して欲しいですが……。

(2012.10.09)


六月の夜と昼のあわいに/恩田陸 序詞:杉本秀太郎 (朝日文庫)

★★★  

まず杉本先生が詞・和歌・俳句を記し、そのモチーフに合わせた絵を組み合わせ、 その後に恩田先生が短編を書く、という形で編まれた10編の短編集。

ジャンルもバラバラですが、ちゃんと詞のモチーフを踏まえてます。 SFっぽい「Y字路の事件」、軽いホラーの「酒肆ローレライ」、 パラレルワールドSF?な「窯変・田久保順子」あたりが面白かったです。

(2012.10.06)


赤い月、廃駅の上に/有栖川有栖 (角川文庫)

★★★  

テツを自称する作者が贈る、「鉄道」をテーマにした「怪談」ミステリ集。

一口に「怪談」といっても、幻想っぽいのから、ど真ん中のホラーから、コミカルなものから、 人情物まで、バリエーションに富んでいて楽しめます。 特に本人いわく「落語」の「最果ての鉄橋」の会話が面白かったですね。 そして怪談でありながらも、その背後に何らかの「ルール」の存在を感じさせるところが、 やはり有栖川有栖だなあ、とも思ったりしました。

(2012.10.03)


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