★★★
「六枚のとんかつ」の蘇部健一が小学生向けの「青い鳥文庫」に登場。
「文庫」って名前だからAmazonで購入したのに、新書サイズじゃん…。 騙された…。
小学生向けということで、ルビも振ってあるし、活字も大きいし、 読みやすかったです。
稲妻先生の破天荒ぶりがマンガチックではありますが、面白かったです。 実は結構深いこと考えてる、ってのもいいですね。
(2003.09.15)
★★★☆
怪談や怪異現象に見せかけて闇の事件の決着をつける、 「小股潜りの又市」率いる御行一味。 百物語を編むために全国の怪異譚を蒐集し回っていた百介も、 いつしか一味に取り込まれていき…。
金をもらって凝った舞台を仕立て、 表面上は怪異現象が起こったかのように見せかけ、 裏では全く違った真相が隠されている、という趣向が面白いです。 まさに仕事人風。読者の方は、「仕掛け人」である役者は共通なので、 仕掛けであることはわかるわけですが、 それでもその裏にどんな真相があるのかまではわからない。 そのバランスが絶妙でなんとも面白かったですね。
これくらいの厚さならば電車の中で読むのも苦になりませんしね。 ああ、「塗仏の宴 宴の支度」出ちゃいましたね。 まだ去年の「絡新婦の理」読み終わってないのに…。
(2003.09.14)
★★★☆
日曜の夜は出たくないに続く、 猫丸先輩シリーズの第2弾。今度は長編。
一代で財を築き上げた不動産王のワンマン祖父。 成一は、そんな祖父が最近亡き祖母に謝罪したいと霊媒を呼び込んでいるという話を聞き、 十年ぶりに実家に戻った。成一が実家に帰った夜、密室状況下で祖父は何者かに撲殺された。 さらに、その祖父を呼び出そうとした降霊会の中、第2の惨劇が…。
猫丸の後輩・成一のパートと、その従妹で幼い時の事故により体の不自由な左枝子のパートが交互にある構成。 相変わらず猫丸先輩の突飛なキャラクターが強調されてますが、 中身はかなりの本格ですね。 不可解な状況で起こる現象にちゃんと後から理由が説明されるのは、本格の醍醐味。 幸薄げな左枝子のキャラクターがさわやかな読後感を与えてくれます。
(2003.09.06)
★★★☆
半年に渡る書き下ろしシリーズの完結編。 2巻の最後で衝撃の事件が起こったわけですが、 果たして最後の1巻で全ての謎に決着がつくのか?
…と心配していた向きもないではないのでしたが、杞憂でした。 ちゃんと収まるべきパーツが収まり、見事に収束してます。 語り手が今までの流れからすると「部外者」に近い真魚子になっているのが、 また効果的に物語をまとめるのに役立ってますね。
しかし恩田さんの書く少年・少女たちはいつも魅力的だなあ。
(2003.08.31)
★★★
現在から100年余り未来の世界を舞台にしたSF系ミステリ。 僕・サエバ・ミチルとウォーカロン(自律型ロボットのことらしい)のロイディは、 世界から隔絶された「楽園」ルナティック・シティに辿り着く。 唯一絶対の女王の元、貧富の差も争いも存在しない「楽園」で起こった密室殺人。 犯罪を裁くシステムさえ存在しない街で、いかにして殺人は成し遂げられたのか?
SFでもやっぱり密室にこだわるんだ。いや、まあこの作品の場合、 トリックとかそういうミステリ的要素は正直どうでもいいですけどね。 究極の「見えない人」トリックだし。
SF的要素というか世界観は、森先生の未来観が良く顕れていて興味深かったです。
いやー、それにしても読むのに時間かかったなあ。足掛け2ヶ月くらいかかったかも。 なんかすらすらと読み進められなくて、途中何度も他の本に浮気しながら読んだし。
(2003.08.29)
★★★☆
久しぶりのメルカトル(?)シリーズの新作。 それとも烏有シリーズと言った方がいいんだろうか。
世界的にも高名な芸術家の手によって人里離れた山奥に立てられた屋敷に住む「聖家族」たち。 雪により隔離された屋敷の中で、惨殺事件が起こる。 ピアノの上に生首が、体は焼却炉で焼かれていた。
家族全員の分単位のアリバイが存在するという不自然なほどにミステリ的な設定。 まあ、あまり真面目にこの「アリバイトリック」を解こうとする人もいないでしょうが、 そんなアリバイトリックそのものが舞台装置の一つとして組み込まれているのはさすがというか。
「聖家族」に秘められた秘密と、 各章の頭で断片的に描かれる「真実」は面白かったです。 丹念に張り巡らされた伏線、という感じで、 解決後に読み返すとまた感慨深い。
そしてついに桐璃と結婚することになってしまった烏有。 相変わらずダメダメ人間路線をまっしぐらという感じです。 彼が本当にメルカトルの後継者たり得るんでしょうか。
(2003.08.17)
★★★☆
探偵ガリレオに続く、 科学トリックシリーズ第2弾。
超常現象にしか思えない事件を持ち込まれた物理学者・湯川が、 真相を推理するというスタイルは前作と一緒なのですが、 今作は前作と違ってあんまり「そんなの誰も知らないだろう」的な科学がトリックのメインとして使われていないので、 個人的には前作よりも楽しめました。 演出の仕方によっては普通のミステリにも使えそうなネタが多いですね (最後の「予知る(しる)」だけはちょっと無理かな?)。
なんでも、このシリーズの長編も連載開始されたらしいですね。 楽しみです。
(2003.08.13)
★★★
2作目(プロになって1作目)の「烙印」を元にしてほぼ全面的に書き替えた作品。
リストラされ、女房に逃げられた情けない主人公が、 失踪した女房を追いかけていく内にヤクザに絡まれたり、 女房の妹を名乗る人物が現れたり、情報提供者が死んだり…と巻き込まれていく話。
オリジナルの「烙印」では主人公は元警察官でハードボイルド調だったらしいですが、 それよりはこの軽いタッチの方がずっと読みやすいですね。
途中までは非常に楽しめたのですが、どうも最後がなあ、という感じでした。 女房が失踪した「理由」にそれほど説得力を感じなかったというか、 ボタンの掛け違えが招いた悲劇というか…。
(2003.08.12)
★★★
「少年の時間」とペアになった1冊。少女が主人公だったり重要な役所を担った作品が集められてます。
やっぱりSFっぽいのが多かったけど、ホラーっぽいのも多かったです。 やっぱり少女にはホラーが良く似合う?
中では篠田真由美さんの「セラフィーナ」がよかったです。
(2003.08.07)
★★★
徳間デュアル文庫の書き下ろしアンソロジー。もう一つの「少女の空間」とペアになってます。
西澤保彦さんがいるので、ミステリ中心かと思って読んだら、 SF中心でした。まあ面白かったですけど。 ミステリっぽいのは西澤さんのだけでしたね。 しかし「少年」テーマでこういう作品かね>西澤作品。
(2003.07.27)
★★★
Vシリーズ第4弾。例の4人組が東京に出てきてTVの公開番組に出演。 収録の合間にプロデューサが殺され、疑惑の渦中にいるアイドル少女は、 なぜか練無を連れて逃避行…。
「夢で会いましょう」と「夢・出逢い・魔性」と「You May Die in My Show」 を掛けたハイレベルなタイトルですね。
相変わらず密室にはこだわってますが、 今回は割とオーソドックスな「見えない犯人」系のネタですね。 叙述も効果的に使われていたと思います。 収録中に解決編を延々と語り始めてしまう紅子さんは面白かったです。
(2003.07.22)
★★★★
結婚を目前に控えた俺・神崎達也は上司である課長に呼び出され射殺された…はずだが、 なぜか幽霊となってこの世に留まっていた。 しかし他の者には姿は見えず声も聞いてもらえず、自分からこの世の物に干渉することもできない。 どうにかして課長が犯人である証拠を見つけなければ…。
ミステリとラブ・ストーリーが融合!というキャッチフレーズの、 有栖川有栖先生のノンシリーズ作品。 無念の死を遂げた主人公が、死の謎を解き明かすために留まる、 という設定は映画「ゴースト」なんかにも通じますが、 本人が刑事ってのはちょっと新鮮かも。 幽霊となれば自在に飛べるし、どんな壁もすり抜けて証拠を集めることもできるから、 刑事としてかなり無敵なのでは?と思いきや、 あんまりその特性を有効活用できていないところが(笑)。 フィアンセの須磨子と「霊媒師」の早川のキャラクターがいいですね。
しかしとんでもなく腐敗した警察だな…。
(2003.07.18)
★★★☆
「怪獣映画」製作の現場を突然襲った殺人事件。 大阪で顔を焼かれた死体。 そしてほぼ同時刻に殺されたと思われる死体が遠く離れた九州で見つかった。 果たして犯人は?監督に降りかかった濡れ衣を晴らすことは出来るのか?
森江春作シリーズは、長編としては2作目。 初めての作品を見た時は「こんな冴えない奴が探偵役かよ…」と思ったもんでしたが、 あれから時を経て大分探偵役が板についてきたようで。 というか、公式な職業は弁護士なんですね。弁護士である探偵役って結構新鮮かも。
この作品では、さらに助手役として新島ともかが初登場。 けなげに助手役をこなしています。あとがきとか解説を読むと、 やっぱり大人気だそうで。やっぱり名探偵には助手が必須ですよねー。 ニッキー・ポーター万歳。
映画への造詣が深いところも十分に発揮されていまして、 後味も良い作品に仕上がっていました(え、そんなんで済むの? という疑問はないでもないですが)。
(2003.07.13)
評価保留
書き下ろし三部作、1巻に続く第2弾。 第二部「ケンタウロス」を収録。
限定された空間、限定された人数で繰り広げられる「過去」の探りあい… というシチュエーションが恩田陸さんには多いですね。 「ネバーランド」もそうでしたし、 「木曜組曲」なんかもこのパターンに入りますね。
段々と十年前の真相が明らかになりつつある時、最後の最後でとんでもない展開が。 果たしてどんな結末を迎えるんでしょうか。3巻は8月発売予定。
(2003.07.12)
★★★
「プレゼント」に続く、女探偵・葉村晶シリーズの連作短編。
ハードボイルドで、悪意に満ちた事件が並んでいます。 正直、重すぎて辛いものがありますが、 葉村と「濃紺の悪魔」との決着は気になるところでありますね。 単なる短編集ではなく、ちゃんと「連作」になっているところが、 さすが若竹さんです。
(2003.07.06)