推理小説の部屋

ひとこと書評


おはようおかえり/近藤史恵 (PHP文芸文庫)

★★★☆ 

見た目は似ているが、性格は真逆な小梅とつぐみ姉妹。大学進学もせず、実家の和菓子屋で働く小梅に対して、 大学で演劇をやりながら、中東への留学を計画するつぐみ。 そんなつぐみに、ある時「おはよう おかえり」と妙な関西弁を使う年寄りが取り憑いた。 どうやら曾祖母の榊らしいのだが……。

「おはようおかえり」とは、「早く帰っておいで」という、「いってらっしゃい」に相当する挨拶。 明治生まれの曾祖母とのジェネレーションギャップに戸惑いながら、 自分の生き方を見つめ直す姉妹の様子が描かれます。

(2025.02.02)


砂男/有栖川有栖 (文春文庫)

★★★☆ 

江神シリーズと火村シリーズの短編が混在し、さらにノンシリーズものを2編収録した珍しい短編集。

江神シリーズは万年供給不足なので、短編でも供給があると嬉しいですね。

(2025.01.23)


ペッパーズ・ゴースト/伊坂幸太郎 (朝日文庫)

★★★★ 

他人の「飛沫感染」をすると、その人の明日のハイライトを先に見ることができる能力「先行上映」を持つ、 中学教師の壇先生。生徒の父親の未来を「先行上映」して見たことから、とんでもない事態に巻き込まれ……。

悲観的なロシアンブルと楽観的なアメショー、という二人組の「ネコジゴ・ハンター」が、 猫の虐待に加担した人々に復讐していく仕事人みたいなパートが挟まっており、 それはどうやら女生徒の書いた小説(作中作)らしいことがわかります。 そこに「サークル」に所属する成海という女性の視点も加わり、3つのパートが入れ替わり現れるのですが、 途中でその境界がゆらいで……。

「ペッパーズ・ゴースト」というのが舞台用語で、そこにないものをあるように見せる演出のことらしいですが、 読者がまさにその演出に巻き込まれていくような構成ですね。 また、強者同士をぶつけて解決する、という辺りは「グラスホッパー」や「マリアビートル」のような殺し屋大集合みたいなのにも通じるものがありますね。

(2025.01.14)


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