★★★☆
忘却探偵シリーズ第3短編集。今回は「アリバイ」「密室」「暗号」という、 本格ミステリ3大モチーフに今日子さんが挑む、という趣向。
よりによって1日しか記憶が持たない今日子さんにアリバイ工作の相手を頼んでしまった、 というプロットだけで面白いこと決定の「〜アリバイ証言」、 デパートのアパレルショップの試着室という密室いうにはあまりにも脆弱な密室「〜密室講義」、 書き残されたダイイングメッセージの意味を犯人自身が知りたくて残してしまった「〜暗号表」の3作品。
作品を重なる内に、今日子さんのがめつさ、大胆さ、切り替えの早さ、などのキャラ要素が積み重なる一方で、 なぜこのようなキャラになったのか、という謎も深まる一方ですね。
(2019.12.25)
★★★★
「古典部」シリーズ最新短編集。ホータロー視点の話と、伊原摩耶花視点の話が混じる中、 える視点で始まる表題作の最終話「いまさら翼といわれても」が始まり……。
シリーズ物の短編集というと、時系列がバラバラだったりして、仮に短編集をスキップして長編を続けて読んでも問題なかったりするケースが多いのですが、 本作品はかなりシリーズのターニングポイントとなる重要な巻となってますね。 次の長編は、今回のを読まずには話が繋がらないと思います。 えるだけでなく、各人にとっても転換期となる話(あるいは転換期となった話の追憶)が多かった気がします。
(2019.11.07)
★★★★
シリーズとしては「丕緒の鳥」以来6年ぶり、長編としては「黄昏の岸 暁の天」」以来18年ぶりの十二国記、長編、新作。 文庫書下ろし。
舞台は正式に十二国記エピソード0に位置付けられた「魔性の子」から、ずっと問題続きの戴。 ようやく泰麒が戻って来たのに、今度は新王・驍宗が行方不明になり、偽王が立つなど、 問題続きの戴をどうにかする長編。
リアルタイムで読んでた人は、二巻終わった時点での絶望感で一か月待たされたんですか!?という感じですが、 そこから三巻でのどうにかなりそう感、四巻に入ってのやはりどうにもならんのかの絶望感、 と最後の最後まで希望が見えない状況での逆転劇が心地よかったです。 泰麒、やっぱり積み重ねてきた年季が違う……。
戴の物語としてはこれで一旦終了。性質上いくらでも続編は書けそうですけど、 これまでのペースからするともうしばらくは続編は出なさそうですね。
(2019.11.24)
★★★
Gシリーズ、最後の三部作。モチーフはもちろんエラリー・クイーン(バーナビー・ロス)の「Xの悲劇」から。 同じように、電車の中で殺人事件が起こり、被害者が指で「χ」の印を作っています。
主人公は、これまで何度か登場していた天才プログラマの島田。 島田目線で、これまでのギリシャ文字の事件が振り返られます。
プロットは「Xの悲劇」だけど、オチは「Yの悲劇」っぽかったような……(微妙なネタバレ。いや、この文だけで真相を当てられる人はいないだろうけど)。
しかし海月くんって、そういう関係だったんだ……。色々と衝撃の人間関係が明らかになった作品でした。
(2019.10.20)
★★★
乙一の別名義、中田永一、山白朝子、それに越前魔太郎を加えた、「一人アンソロジー」。
乙一がミステリ寄り、中田永一が恋愛小説寄り、山白朝子がホラー寄り、 といった感じで作風を使い分けているようですね。
「山羊座の友人」はジャンプSQでミヨカワ将さん作画の漫画で読みました。
(2019.06.04)
★★★☆
掟上今日子の忘却探偵シリーズ第2弾。前回の語り手だった厄介くんは残念ながらお払い箱となったようで、 今回は警備員の親切(おやきり)くんと、美術を巡る2つの謎(3章あるけど)に挑みます。
「最速の探偵」の名に恥じぬ解決っぷり。真相はほぼ初見で見抜いていて、後は検証作業。 しかしそんな今日子さんに振り回される親切くん、という構図。
厄介くんは1作目で解雇されてしまいましたが、親切くんは3作目以降も出てきそうですね。
(2019.02.03)
★★★☆
「その可能性はすでに考えた」「探偵が早すぎる」の井上真偽のデビュー作が文庫化。 メフィスト賞受賞作。
天才数理論理学者で、既にセミリタイアして悠々自適の隠遁生活を送る硯さん。 そこに大学生である甥の詠彦が、事件を持ち込み、硯さんが論理学で解明する、 という構図。ただ、持ち込む事件は既に他の探偵により、解決済み。 硯さんは検証する、というところが変わってます。
探偵も1話目はおっとり美人の花屋探偵、2話目は現役女子大生経営コンサルタント探偵、 そして3話目は「その可能性はすでに考えた」の上苙丞が登場。 というか、こっちの方が先だったわけですね。
検証に使う論理も、1話目は古典論理、2話目は直感主義論理、3話目は様相論理、 と段々とレベルアップしていく細かさ。
まあ、これが第一作だと、さすがにハードルが高過ぎて、 他の作品に比べて文庫化が遅れた理由はわかります。 しかし、らしさは存分に一作目から発揮されていますね。
(2019.01.24)
★★★☆
ジャーナリスト・太刀洗万智シリーズ長編第1弾。新聞社を辞め、フリーになった万智が、 ネパールで海外旅行特集の取材で滞在中、国王の殺害事件が勃発する。 果たして万智の初仕事で、王族殺害の真相スクープをものにできるのか?
「探偵が事件に対してどう取り組むべきか?という後期クイーン問題のような命題を包含したテーマ。 ジャーナリストとなれば、何を報道して何を報道しないか、その選択が書き手に委ねられることになります。 万智は、取材の途中、そんなジャーナリストとしての姿勢に対する質問を突き付けられ、 苦悩し、最終的に彼女なりの結論を出します。
警官2人につかれて、万智が覚醒してからの加速感がたまりませんでした。
(2019.01.12)
★★★☆
I・IIは「ジャンプ+」で無料配信され、完結編となるIIIは買って読んでね、という戦略。 まんまと乗らされました……。
「BLEACH」の公式スピンオフですが、一護が最後まで出てきません。 主役は九番隊のヘタレ副隊長・檜佐木。対する敵は、四大貴族の一つ、綱彌代家の当主・時灘。 さらに、死神・虚・滅却師・人間(完現術師含む)と霊王の欠片を混ぜて次代の霊王とするべく作られたびっくり合成死神の産絹彦禰。 尸魂界・現世・虚圏の危機に、死神・破面・滅却師・完現術師の混成パーティーが共闘する展開に。
まあ良くこれだけのキャラクターをそれぞれに見せ場を作って動かせるな、と感心しました。 原作では未登場だった、平子と檜佐木の卍解も登場。 公式スピンオフとして、原作ファンには十分満足できる仕上がりになっています。
(2019.01.06)